これらの問題を克服しなければ、持続可能な成長を求めることはできません。
多くの自動車メーカーは、多額の研究開発資金を投入し、解決策となる技術革新を続けてきました。
技術のデファクト(事実上の業界標準)を握ることで、より有利な競争条件を得ようとしているのです。
環境対策として、クリーン・ディーゼルエンジン、ガソリン・ハイブリッド、燃料電池という3つのパワートレインが有望技術として考えられています。
戦略は各社多様ですが、欧州メーカーがディーゼル車、日本車メーカーがハイブリッド車、米国メーカーが燃料電池車に比較的注力をしてきた結果、それぞれに強みを持っています。
なかでも、ハイブリッド車に関しては、日本車の独壇場が築かれています。
特に、トヨタ自動車が、ハイブリッドエンジンを過渡的なエンジンとは考えず、本格的な環境エンジンとして戦略的に市場拡大に取り組んでいる結果です。
ホンダも比較的積極的にハイブリッド商品を投入しています。
従来のシビック、アコードに加え、2008年には新開発のIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)ハイブリッドを搭載した新型小型車を市場投入し、20万台を超える販売台数を目指します。
日産自動車はハイブリッドの採算性の低さなどを理由に、自社製ハイブリッド投人に対して慎重なスタンスをとっています。
しかし、近い将来に自社開発ハイブリッドの商品化に進む可能性があります。
欧米メーカーは、従来はハイブリッドの商品投入に慎重なスタンスでいました。
この理由には、第1に、欧米的な走行状態では、燃費性能でディーゼルエンジンが勝る、第2に、製品コストを克服することが困難であると考えたためです。
この結果、欧州メーカーはクリーン・ディーゼル、米国メーカーは燃料電池車の開発に注力する傾向がありました。
しかし、予想を超えるスピードで進む新興国需要の拡大と原油・ガソリン価格の高騰は、彼らの戦略に修正を余儀なくさせています。
欧米メーカーはトヨタ自動車に追随し、近年はガソリン・ハイブリッド自動車の開発を急いでいます。
ダイムラークライスラー、GM、BMWは「ツー・モード・ハイブリッド・システム」の共同開発で合意しており、2007年以降順次ハイブリッド製品を投入する方向です。
従来は、過渡的技術として見られてきたガソリンハイブリッドは、本格的な技術商品として市場拡大が期待できる情勢となってきています。
特に、需要拡大の起爆剤となると考えられるのが、2008年にも予想される現在「プリウス」に搭載されているトヨタ・ハイブリッド・システムを大幅に刷新する、同車のフルモデルチェンジです。
その段階で同システムは第3世代に移行し、画期的なコスト構造改革の実現が目指されるでしょう。
コストデメリットが完全に克服できることではありませんが、一定の追加価格で通常の車両とほぼ同等の採算性を確保できるところまで、大きくコスト改革が進むことが期待されます。
ディーゼルエンジンに対する規制の強化が続くことは不可避であり、クリーン・ディーゼルのコスト上昇が続くことを考慮すれば、ハイブリッドのコスト面での比較競争力は大きく改善することが予想されます。
通常のガソリン価格車両と比較したハイブリッド車の割高差異は半減する方向であり、その時点で、ハイブリッド車両の基本採算は既存のガソリン車と同等水準に引き上げられる可能性があります。
収益性の好転と商品魅力(性能アップと価格下落)の好転を挺子に、ハイブリッド車販売で100万台体制の確立を目指すことになります。
ハイブリッド車の市場規模がどの程度拡大していくかは、ガソリン価格と主要コンポーネンツ、特に、二次電池(充電と放電を繰り返すことができる電池)の性能価格の動向に大きく左右されるため、不透明です。
しかし、着実に拡大していくことは確実です。
2015年までの10年間で、世界需要の5〜7%程度に拡大するポテンシャルがあるのではないかと考えます。
ちなみに、J.D.パワーアジアパシフィックの2006年1月調査に基づけば、2012年時点で、米国市場の4.2%がハイブリッド車に置き換わると予想されます。
日本では乗用車としてはなじみの薄いディーゼルエンジンですが、その燃費性能の高さが評価され、欧州では非常に広く普及しています。
欧州自動車工業会(ACEA)の調査に基づけば、2005年でのEU乗用車販売台数の2台に1台がディーゼル車になっています。
フランスでは実に69%がディーゼル車です。
ディーゼルの強みは燃焼効率の高さであり、比較的低い費用で高い燃費性能の向上が得られることです。
過去に課題であった振動や騒音の問題も技術革新で大幅な改善が進み、ディーゼル人気に拍車をかけています。
欧州でのディーゼル比率は55〜60%程度まで拡大する可能性があります。
一方、燃費性能の向上と一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)などの有害排気物排出量にはトレード・オフ(一方が向上すると他方が悪化して両立しにくい)関係が強いことが、このエンジンの弱点です。
有害廃棄物を除去するための高性能な燃料噴射装置や触媒性能を引き上げることが必要になります。
有害排気物排出量規制は年々強まるため、対応コストの上昇がディーゼルエンジンの普及にブレーキをかける恐れがあります。
非常に厳しい「Euro- 6 規制」が実施されると見られる2010年初頭には、欧州でのディーゼル普及は頭打ちになる可能性があります。
米国では、近年のガソリン価格上昇の影響を受け、今後ディーゼル車人気が拡大することが予想されます。
ホンダは、非常に厳しいと言われるカリフォルニア州の「BIN5規制」をクリアするディーゼルエンジンを2008年に米国市場投人することを発表済みです。
米国でのディーゼル比率は2005年の3%から2015年頃には10%を超えると考えられます。
日本を除くアジア地域でもディーゼルエンジンは有望です。
特にインドは、近年、自動車政策がディーゼル拡大戦略に転じており、現在の20%から大きく成長することが期待できます。
インドで市場シェア50%を握るスズキは、フィアットから技術導入したディーゼルエンジンの大規模工場を立ち上げており、インドをディーゼルエンジンの世界的供給基地とする方針です。
ディーゼル車が世界販売に占める比率は2005年に約20%から2015年頃には30%に達する可能性があると考えます。
ちなみに、J.D.パワーアジアパシフィックの2006年4月調査に基づけば、2015年時点で、世界市場でのディーゼル販売台数は2,900万台に達し、市場シェアは26%に達すると予想されます。
全世界の保有車両台数が今後、飛躍的な成長を遂げる見通しのなかで、これまでの石油を中心としてきた石油社会が持続可能でないことは自明です。
ハイブリッド車やディーゼルは資源の有効活用の手段であって、エネルギー問題の抜本的な解決策ではありません。
何らかの新しいエネルギーをベースにする社会構造に転換しなければならないのです。
現在、水素が持続性のあるエネルギー源であると考えられており、水素をエネルギー源とする経済体制、すなわち「水素社会」の確立が重要な議論となっています。
燃料電池はGMが1,000億円以上の研究開発費を投じ、世界をリードして開発を急いでいます。
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